みんなおはよう！ 天気も良いし、清々しい朝だな。 俺の心は曇天だけど。 　昨日あんな事があったというのに、疲れてたからかグッスリ眠れた俺・・自分の心の強靭さに惚れ惚れするね！ おかげさまで朝もすっと起きれたよ。 キョウの夢見て、昨日の事思い出して飛び起きたってのが真相だけど。 あ～あ、どんな顔してキョウに会えばいいんだよ。学校行きたくねぇな・・ まだ乳首痛いし。 そう思いながらも家を出てエレベーターに乗り、マンションのエントランスから外に出たら・・・ いきなりピッカピカの笑顔の完璧魔王！ 怖っ！怖い！笑顔が怖いって何？ 笑顔なのに王子っぽくない！完璧魔王の魔王スマイル！ 何か分かんねぇが絶対に恐ろしい事が起こる予感。 俺今日やっぱり学校休もうかな・・そうだ回れ右してお家に帰ろう！ 「おはようアス。」 ニッコニコのキョウにガシッと肩を掴まれた・・・ 「忘れ物かな？」 「い、いや、ちょっと体調悪いしやっぱり休もうかと・・・」 「・・アスママもう出勤していないんでしょ？心配だからオレも休んで付いててあげるよ。」 「あっ！う、うん、何かもう大丈夫みたい。さっ、学校行くぞ。」 冗談じゃない。そんな状況、美味しくいただかれる未来しか目に浮かばねぇわ！ 「アス、ホントに大丈夫？」 「大丈夫だって！って、何で一緒に登校してんだよ！俺はまだ許してないんだからな！」 「ぷはっ！・・・はいはい、"まだ"ね。」 くそぅ！またしても痛恨のミス！これ以上魔王を喜ばせてどうすんだよ。 「・・・ねぇ、アス。今週の土曜って何か予定ある？」 うっ、これはどう答えるべきなんだ？ キョウの様子から何か企んでるのは確実。 予定はないけど、ある振りして断った方がいいのか？ 「親父がね、ここから二駅先にある海が見える公園で土曜にライブするんだ。昼からやってるデイ パーティーで親父のタイムテーブルも夕方みたいだからさ。久々にアスも行かないかな？って思って。」 「飲食の屋台とフリマがメインで入場料も無料みたいだしね。」 えっ？それは行きたい。 　キョウの親父さんは二十歳そこそこでキョウの親になったので、まだ三十代後半と歳も若いが見た目は更に若く、キョウと並んでもお兄さんにしか見えない。顔もそっくりだし。なので俺は昔からジュンさんと呼んでいる。 　俺はジュンさんのライブを見るのが大好きだった。 キョウのように、夜のライヴハウスやクラブは無理だったが、そういった野外のデイ パーティーには昔何度か連れて行ってもらったことがある。 ライブ中のジュンさんは別人だ。 普段の口の悪さを微塵も感じさせない真剣な表情は、元々完璧に整った顔を更に神々しく見せる。 音もそんな激しいものじゃなく、子どもの俺が聞いても心地良いものだった。 アンビエントっていうジャンルらしい。 音楽のことはよく分からないが、とにかくジュンさんも音もカッコよくて！大ファンになったんだ。 キョウに聞いたら、夜はもっとノイズっぽい激しめの音が多く、バンドにいたっては気が狂ってるようなシャウトで歌うんだって！すっげぇ見てみたい！ ソロの時には基本音だけでボーカルは入らないから、ジュンさんの歌声をちゃんと聞いた事がないんだよな。 けど、そのソロの方すらキョウから長年ガン無視されてたせいで小四以来全然見てない。 「ねぇアス？どう？」 　うーん、キョウの魔王スマイルは気になるが、ジュンさんのライブは見たい。 公園で夕方だし流石にキョウも何もしないだろう。多分・・・ 「おぅ。土曜なら空いてるよ。ジュンさんのライブは俺も見たい。」 「ホント！！じゃあ一緒に行こうね。昼過ぎに出て、晩御飯は向こうの屋台で食べようよ。アスママには御飯いらないって言っておいてさ。」 　何か魔王スマイルがますます輝いてるんだけど大丈夫かな俺・・・ 　その日学校では、笑顔のまま登校した完璧王子と、その横を歩く眉間にシワを寄せた仏頂面の腹黒王子ちゃんの噂で持ちきりだった・・・らしい。