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アス第10話

   あれから学校ではやたらと注目を浴びた。 あの後も何かとオレに付き纏うキョウ。登下校は必ず一緒。 小学校の頃からの同級生女子には 「やっと完璧王子と仲直りしたの?ありがとう!」 とギラギラした目で何故かお礼を言われるし、 もしかしたら「あなたはキョウ様に相応しくない」的な罵りを受けるかも?と覚悟していたキョウの取り巻き達からも、生暖かい目と言うよりはこれまたギラギラした目で祝福された。正直キモい。 まぁ、俺がキョウに対して何かをしたわけではないから罵られる謂れはないけどな。    はい、そんなこんなであっという間に土曜日です。    さっき、昼飯に母さんが作っておいてくれたオムそばとおにぎりを食べた。 焼きそばを卵で包むだけで、何であんなに美味しくなるんだろう。 今日も仕事なのにありがとう母さん。  母さんは、百貨店で契約社員として働いている。 俺が居るので、基本朝から夕方までのシフトにしてもらっているらしが、繁忙期や人が足らない時には閉店時まで働くこともある。もちろん土日も出勤が多い。 社員になるとそういうシフトの融通が効きにくいため、契約社員のままでいるみたいだ。 幸い父さんが結構な額の保険金を残してくれたため、そこまでガッツリ働かなくても何とか食べていけるらしい。 今日は人が足りないらしく閉店時までのシフト。 晩御飯はいらないと言うと喜ばれたよ。  キョウとはメッセージのやり取りをしているので、今日の事も知っているはずだが何も言われなかった。 ・・・母さんは俺がキョウにヤラレてもいいのか?いくら腐女子でも自分の息子がそうなってもいいの?・・いいんだろうなぁ・・きっと。 母さんキョウのこと昔から無茶苦茶気に入ってるし。 あのガン無視時代でさえ俺が愚痴ってもキョウを擁護してたもんな。 そりゃ、本気でキョウが俺を傷つけたなら、怒って俺の味方してくれるだろうけども。  でも、俺も無視されて傷ついてたんだぜ?母さんのことは置いといて、俺はキョウを許せるのか? 許したとしてキョウを好きになって・・あっ、愛せるのか?ヤラレてもいいのか?男だぞ?俺だって女の子とヤリてぇぞ。 うーん・・・思考がエンドレス。  あぁ、もう用意しねぇとキョウが迎えに来る時間だ。 俺は歯を磨いて・・(ちょっとだけ丁寧に磨いたけどエチケットだ、うん)服を着替えた。 お気に入りのTシャツに細身のカーゴパンツ、上にはパーカーを着る。 男子高校生のファッションなんてこんなもんだろ? ピーンポーン あっ、もう来たのか。 「はーい。」 キョウの姿を確認してからドアを開ける。そこには・・・ 黒のスキニーパンツにドクターマーチンを履き、トップスにはワインレッドの無地のTシャツ、その上に薄手のストンとした黒のコートを羽織った完璧魔王が居た。 モデルかよっ?! すみません。男子高校生のファッションなめてました。 しかも、赤と黒で更に引き立つ魔王感。俺隣歩ける? 「アスお待たせ!」 「・・俺、一緒に行くの嫌になって来た。」 「何で?!アスも楽しみにしてたじゃない!」 「何でそんなモデルみたいにカッコいいんだよ!俺、隣歩けねぇよ!」 「えっ?アス、オレのことカッコいいって言ってくれたの?嬉しい・・・」 身体を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめられる。 「んぐっ!苦しい!止めろバカ!」 「ふふ、ごめん。アスもかわいい格好してるじゃない。全然大丈夫だよ、似合ってる。早く行こう。」 まぁ、ごねて俺の見栄えが良くなるものでもないしな。 スニーカーを履いて外に出た。

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