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アス第11話
電車に乗って二駅、降りてから徒歩十分でパーティー会場の公園に着く。
海が一面に見渡せるとにかく広い公園だ。
子どもが遊ぶ遊具も充実している。ミニアスレチックみたいになってて楽しいんだよ。
俺も小さい頃キョウと一緒によくここに連れて来てもらったな。
パーティーが開催されてるのはだだっ広い芝生の一角だ。
そこまで大きなフェスではないので、こじんまりとフリマや、飲食の屋台が出ている。
それでも三十か四十店舗くらいはあるんじゃないかな?なかなか楽しめそうでテンションも上がる。
キョロキョロしている俺にキョウが声をかける。
「あっちのスタッフテントに親父が居るんじゃないかな?行ってみる?」
「うん、行く行く!ジュンさんに会いたい!」
ステージとDJブースに近い所にある屋根だけのテントの下で、椅子に座ってビールを飲んでるジュンさんが居た。
「ジュンさん!お久しぶりです。」
「おぅ!アスラちゃん。バカ息子が長い間すまなかったな。ムカつくだろうがコイツも本気みたいだし、まぁ考えるだけでもよろしく頼むわ。」
「あっ、はい・・・」
六年ぶりにきちんと会うジュンさん。
相変わらず若いしカッコいいなぁ・・・
んっ?隣に居る美人な男の人は誰?
「ふふっ、アスラちゃん初めまして。ジュンさんの専属PAやってるレンといいます。噂は聞いてるよ。キョウくんが唯一心を開く相手なんだって。」
はいぃ?何その情報??
「あ~おれの相方っちゅーか、恋人なんだわ。」
!!!ジュンさんからの爆弾発言!!恋人?男の人だよな?えぇっ~!
「アスラちゃん、何か困った事があったら連絡して?少しは力になれると思うから・・」
俺がびっくりして固まっていると、レンさんに電話番号を書いた紙を渡された。
「あっ、じゃあ俺も・・・」
「ダメだよアスラちゃん。初対面の人間に連絡先なんか渡しちゃ。どうしようもなくなってからでいいから。その番号でSMSメッセージも送れるからね。」
「この親子の被害者の先輩として頼ってね。」
「ちょっとレンさん、何言ってるの?アスに余計なこと吹き込まないでよ。」
ムッとしてるキョウ。
あ~ダメだわ俺。情報量が多すぎて処理出来ない。
「行くよ、アス。」
「おっ、アスラちゃん楽しんでくれよなっ!」
笑顔のジュンさんと手を振るレンさん。
俺はキョウに引きずられてその場から退場した。
「ア~ス、あれだけ言ってもオレに携帯番号教えてくれなかったのに、初対面のレンさんに何ですぐに教えてようとするかなぁ?」
うっ、魔王様が怖い。
「はい、スマホ出して。トークアプリの交換するよ。」
流石に断れなくてトークアプリの登録と電話番号の交換をした。
「なぁキョウ、ジュンさんとレンさんが恋人って・・・」
「あぁ、親父はバイなんだよ。バイセクシャルで男でも女でも愛せるの。レンさんはノンケだったはずなんだけどねぇ。いつの間にか親父の毒牙にかかってたみたいだね。」
怖っ!秋月魔王親子怖っ!
まぁ、ジュンさんだしなぁ・・あの人に迫られて落ちない人いる?
それを言うならキョウもだけど。大丈夫か?俺?
早くもレンさんに相談したくなって来たぞ。
その後、機嫌が治ったキョウとフリマを見てまわる。おっ!古本もあるじゃん。
ゆっくりと吟味して、文庫本を三冊だけ買った。これくらいなら肩からかけているショルダーバッグに入るしな。
隣の店で服を眺めていたキョウは結局何も買わなかったようだ。
他の店もひとつひとつ見てまわってたら結構時間が過ぎた。
ジュースを買って飲みながら飲食の屋台も見てまわる。
ジュンさんのライブは六時からみたいだ。
小腹が空いて来たので、ライブ前に軽く飯を食う。俺はガパオライスで、キョウはサテ付きのナシゴレン。
こういうフェスってアジア飯多いよね。好きだから嬉しい。
そうこうしているうちにジュンさんのライブの時間になった。
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