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アス第14話
「おじゃましま~す。」
子どもの頃に玄関からこっそり覗いたことしかないキョウの家。
ちょっと緊張する。
手を洗わせてもらい、リビングのソファに座る。暑いからパーカーを脱いだ。
そっと周りを見渡すと、リビングの壁には棚が置かれすごい量のレコードとCDが収納されていた。
「すごい数だな。俺レコードとか初めて見たかも。」
「最初は親父の機材ルームに収まってたんだけど、機材が増えて置く場所がなくなったみたいでね。こっちまで進出して来たんだ。バンドのCDは後にして機材ルーム覗いてみる?中に入るのは無理だけど、覗くくらいなら親父も怒らないよ?」
「マジで?見たい!」
ジュンさんの機材ルームは圧巻だった。所狭しと置かれているシンセサイザーや、ミキサーにサンプラー、DJが出来るようになのかターンテーブルも二台ある。
それらが大量の配線で繋がれていて、ちょっとした異空間だ。
何と言うか、男のロマンが詰まってる感じ?
「・・・凄いな。」
「うん、スタジオみたいでしょ?ちょっとした録音ならここで出来るみたいだしね。」
「満足したら親父の話はもうお終い。オレの部屋に行くよ。」
「CDは?」
「後でね。」
キョウの部屋はシンプルだった。ベッドに勉強机、壁の中がクローゼットになっているらしく、他にはそんなに物はない。
あぁ、キョウの匂いがするな。
「アス、オレもう限界なんだけど。抱いてもいい?」
いきなりかよ!!
「いや、俺まだ無視の事許してないから無理。」
「えぇっ?心底オレ反省してるよ?本当に悪かったって思ってる。オレがガキ過ぎた。性欲優先の獣以下だった。申し訳ない・・・」
「キョウは自分の事しか考えてなかっただろ?俺の気持ち考えた事ある?俺、マジでキョウに突然避けられる意味分かんなくて、本当に辛かったんだよ。それが六年だぞ?子どもには長過ぎる時間だよ。小学校入って卒業出来んだぞ。」
「うん・・・本当にごめん。」
「ふふっ、キョウの事、完璧魔王だと思ってたけど、実際は俺と同じでガキだよな。」
「俺もガキだったからさ。辛かったんだよ。簡単には許せないよ。俺、俺、むっ、昔からキョウの事好きだったんだよ多分。だから・・・」
涙が込み上げて来て上手く喋れない。
これは六年分の俺の心の痛みだ。
キョウが俺を抱きしめる。
俺は子どものように号泣した・・・
涙ってどれだけ出るんだよ。
次から次へと溢れて来て止まらない。
目を擦ったら腫れるからとキョウに止められ、仕方ないから目の前にあるワインレッドのTシャツに顔を押し付ける。
キョウのTシャツは俺の涙と鼻水でビシャビシャだ。
しばらく泣きまくってちょっと落ち着いた。
キョウはただただ俺を抱きしめ頭を撫でている。
何かスッキリしたな。
うん、決めた。
キョウの目を見てはっきりと言う。
「キョウ、俺を抱いてくれ。」
息を呑むキョウ。
「・・・いいのか?」
「あぁ、泣いたらスッキした。俺、"多分"じゃなくて、ちゃんとキョウが好きだわ。自覚した。」
「その代わり絶対気持ち良くしろよなっ・・・」
言い終わるまもなく抱きしめられ、深いキスをされた。
あぁ、俺キョウにキスされるの好きだな。
口の中を舌で蹂躙され、すぐに身体の力が抜ける。
溢れそうになるどちらのものか分からない唾液を夢中で飲んだ。
目を開けると完璧に整ったはずの顔が少し歪んで赤く染まり、壮絶な色気を発していた。
「明日楽、好きだよ。大好きだ。愛してる・・・」
そう耳元で囁かれ、俺は完全にキョウに身を任せた。
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