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番外編3 ジュン×レン 馴れ初め編(ジュン1)

 おれがレンに初めて会ったのは十年前。 大学生になりたてのレンが、おれがよく出演するライブハウスにバイトとして入って来たんだ。 まだガキのくせに凛とした美人で、ちょっかいをかけるヤツも多かった。男からも女からもモテてたな。 おれもちょっかいをかけてた一人だ。 おれが揶揄うと真っ赤になるからかわいくてな。 かわいいファンの一人って認識だった。  レンは、バイトを始めて一年ほど経った頃にPAの仕事に興味を持ったらしく、そのライブハウスのPAに弟子入りしたみたいだ。 それからさらに一年ほど経ったある日、その師匠がインフルエンザになったとかで休んだ。急すぎて他のPAを手配出来ず、仕方なしにレン一人にやらせたんだ。 それが何と言うかピタリとMAGの音にハマった。PAも経験や技術だけじゃないんだよ。音の好みやフィーリング、合う合わないは確実にある。 レンのフィルターを通して調節された音は実におれ好みだった。  その後おれは、ライブを演る時にレンをPAで指名するようになる。 これはレンもかなり嬉しかったようで、懸命に技術を磨いていったんだ。    それから更に二年後、年が明けてしばらくした頃、レンから相談したい事があると言われ、ライブの打ち上げ後に二人で飲みに行く事になった。 「ジュンさん、俺もう次四回生になるから就活しなきゃいけないんだよ。で、PAを仕事にするか迷ってるんだけどどう思う?」 「どう思うってお前・・・おれにレンの未来を決める権限はないけどよ。 好きな事を仕事にするなら覚悟がいるぞ。」 「ジュンさん的には俺がもっと技術を磨いた方が、自分が使うPAとして嬉しい?」   「いや、おれは技術よりフィーリングが大事だと思うぞ。今のお前の音は気に入ってるし、そのままでもかまわねぇよ。」 「仕事となるとな、レンが嫌いな音も最高の状態にして客に聞かせねぇとなんねぇよ。音以外の雑用のが多いだろうし。ほとんど搬入と運搬、撤収じゃねぇの?それをする覚悟があって、その上で自分の技術を磨きたいんならその道に進んだらいいんじゃねぇか?」 「そうだよね。分かってるんだけど・・師匠にもそう言われたし。でも他にしたい仕事もないからどうしようかと思って。 ジュンさんはメジャー目指してプロのミュージシャンに!とか思わなかったの?」 「正直、おれ一人でならって話もあったんだけどな。もっとポップな曲歌えばこのルックス込みで売れるから!とか言われてよ。 けど、歌いたくもない歌でメジャーになってもなぁ・・・何が楽しいんだ? それにソロなら別に歌わなくてもいいわ。自分が好きな音出してる方がいい。」 「ふふっ、ジュンさんらしいよ。けど、よく就職する気になって今の会社に入れたね。」 「あ~キョウができて金がいったし、適当に面接行ったら何か気に入られた。」 「うわっ!マジで天性の人たらしだ・・・」 おれは普段はそこそこの会社の営業マンだ。営業成績もいいんだぜ。 「まぁ、しっかり考えんだな。」 「うん、そうするよ。ありがとうジュンさん。こんな時間になっちゃったけど、キョウくん大丈夫なの?」 そういや結構な時間だ。 「あぁ、今日は近所の友達の家に泊めてもらってるからな。」 「そう、じゃあ安心だね。もう一軒行く?帰る?」 おれはその時ふっと悪戯心が出た。 こいつ、最近妙に色気出て来てんだよな。食べ頃感満載。 「レン、今一人暮らしだろ?泊めてくれよ。」 「へっ?ウチ?別にいいけど・・・」 そして何の警戒もしてない、と。 まぁ、おれが自分から口説いたり迫る事なんかほとんどないからな。たまに寄って来るヤツを相手にするだけ。それも一回限りだ。 だが何と言うか、今日はやたらとレンが気になる。 「おっし!決まりだ。レンの部屋で飲みなおすぞ!」  おれとレンは店を出て、途中のコンビニで酒とつまみを買い込み、レンの家へと向かったんだ。

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