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第12話
不思議なことに、性器は二本ついている。そこでよく見てみれば、興奮のあまり人型を保てなくなっているのか、神様の肌には所々に黄金の鱗が浮かび、立派な角も伸びていた。
「……綺麗」
「ほう、恐ろしくないのか」
「はい。だって、神様ですから」
「そうか、そうか。それは良かった」
神様は性器の一つを、アルスの蕾に押し当てた。
「アルス、私の愛しい子。——これからの永い時を、私と共に」
ゆっくりと腰が進むと、アルスのナカに神様のそれが入ってくる。人よりも大きく、固いそこ。しかし比べることもできないから、アルスには分からない。
「あっ……神様……」
苦しい。だけど神様と繋がっていると思えば、そんな苦しみも報われる。
(好き。僕は、神様が……好き……)
奥まで入ると、神様は一度大きく息を吐き出した。興奮を抑えているのか、表情には余裕がない。初めて見る顔だ。たまらなくなったアルスは、つい後ろを締め付けた。
「っ……こら、アルス。我慢が出来なくなるぞ」
「……我慢をしているんですか?」
「当たり前だ。私相手なために痛みはないだろうが……初めてなんだ。乱暴にはしたくない」
ずるりと腰を引くと、アルスの蕾から神様のそこが現れた。引いた分だけ押し込める。すると再びアルスのナカに神様のモノが埋められて、そんな当たり前のことが、神様の心をいっぱいにする。
ナカに入っている。神様が、アルスを犯している。
「……アルス……」
アルスの腰を掴んで、神様はリズムよく抽挿を始めた。
二本目のそこがアルスの中心と擦れ合う。そんな感触もたまらなくて、神様は夢中になって奥を突き上げた。
「ん、あっ、神様、奥……」
「はぁ……アルス。ようやくだ。ようやくおまえと、番うことができる」
アルスの好きな一点を擦りつけてやれば、アルスの表情は一気にとろけた。自身で膝裏を掴み、脚を開く。強請られているかのようなそんな姿に、神様はさらに強く奥を穿つ。
「ああ、アルス……なんと淫猥なのか」
「あっ、あ、もっと、っ、そこっ」
「ここだろう。知っている。ここを擦ると、ナカが締まる」
グリグリと刺激されて、アルスは思わず背を反らせた。
「っ! 神、様……!」
「もっと狂え」
神様は姿勢を前のめりに倒すと、もっとも奥を貫くように真上から叩きつける。
うねるナカが神様を受け入れていた。腸壁を擦る感触から快楽が生まれて、神様のすべての感覚がアルスに支配される。
「アルス、私の愛しい子よ」
「ん、ぐ、ぅっ、あっ、神様、好き、好き、です、神様、」
「そうだ。もっと落ちてこい。私のところまで、早くおいで」
ごちゅごちゅと奥を強く抉られて、アルスは脚を張って達したようだった。
白濁がアルスの腹を濡らす。ビクビクと断続的に震えては快楽を逃している。そんな姿を尻目に、まだ達していない神様は再び腰を容赦無く打ち付け始めた。
「ほら、まだ終わっていない」
「んぅっ! 無理、無理です、もう!」
「そのように言うな。初夜だぞ」
アルスから与えられる快楽を追うように、神様は何度も、アルスが泣いたって行為を止めることはない。
だって、ようやくアルスと番うことができる。神様がアルスを番にと決めたのはずいぶんと昔だった。それこそ、アルスが物心つく前のことである。
なんてことはない。まるで雛鳥の刷り込みのように後ろについてくるアルスが愛らしく、いつも神様を求めて手を伸ばすものだから、それなら自分とずっと一緒に居れば良いじゃないかと思っただけのことだ。
「これからずっと、一緒に居ようか」
まだ五歳にもならないアルスにそう言ってみると、アルスは嬉しそうに満面に笑みを浮かべる。
「うん! ずっと神様と一緒に居たい」
——神様にとって、アルスとは無二の存在だ。これほどまでに神様を狂わせ、惑わす存在は二人といない。
神様はずっと縛られている。公明正大、平等であらなければならない「神」という存在を狂わせるなど、後にも先にもアルスだけだろう。けれど、誰に裁かれようとも、誰に後ろ指を刺されようとも関係はない。神様はそれほどまでに強くアルスを欲してしまった。
「もう、無理です……」
声もかすれて出なくなった頃。アルスが音をあげたために、神様も動きを止めた。
いったいどれほど達したのだろう。すっかり日も沈んだというのに、二人は行為に夢中になっていたようだ。
「……疲れたのか」
「はい……」
アルスのナカからずるりとそれを引き抜くと、つられるようにして白濁が溢れた。岩もすっかり白に染まっている。それがアルスのものなのか神様のものなのかも分からないけれど、そんな光景も悪くはない。
まだ乱れた様子のアルスを抱きしめて、神様はその隣で横になった。
「……神様?」
「昔はよく、こうして眠っていただろう」
二人して生まれたままの姿のまま、触れ合う肌の温度に安堵する。アルスは襲いくる睡魔に身を任せて目を閉じた。そんなアルスの頭を、神様が優しく撫でてくれる。
「……おまえが逃げ出したわけではなくて良かった。もしもそうだったなら、人間をすべて呪わなければならなかった」
不穏な言葉が遠くで聞こえる。あまりの眠たさに意味も理解できないまま、安心できる腕の中、アルスはゆっくりと意識を手放した。
寝顔は昔から変わらない。少しだけ幼くなった表情に、神様はつい頬を緩める。
「ようやく手に入った」
アルスのナカには、神様の精液がたっぷりと注がれた。人間が神の精を受けて普通でいられるはずがない。アルスはこれから神様の番として、同じほどのときを、同じように生きることになる。
アルスの腕にぼんやりと浮かぶ金色の鱗。それを見つめて満足げに微笑んだ神様は、アルスを優しく抱きしめて目を閉じた。
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