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第10話
落ち着いたら連絡すると言っていたヒロ君からの連絡は結局、休みの内に来ることは無かった。
月曜日、会社に出勤して昼休みにでもちらっと彼の部署を覗きに行こうと思い、午前中は少し緊張しながら仕事をした。
昼休み、連絡も何もせずに彼のいる経理部に顔を出す。
彼の姿が見当たらず、もうご飯に行ったのかな……と何も音を立てなかったスマートフォンを見て悲しくなる。
いつもなら『お昼一緒に食べない?』って連絡がくるのに。
トボトボ会社を出て近くの中華屋さんに入った。
そこでラーメンを食べて、相変わらず真っ暗なままのスマートフォンの画面を見つめる。
完食してお金を払いお店を出て会社に戻る道で朝よりも気分がどんよりしていた。
「──橋本さん!お金払いますから!もう!私が奢りたかったのに!」
「いや、いいですいいです。そもそも飲み会の時そんなに大したことしてないんで。」
そんな時、一度聞いたことのある女性の声と、ヒロ君の声が聞こえた。
顔を向けると、彼は女性と二人で歩いていて。
ああ、結局二人でランチしたんだな、と勝手に裏切られたような気分になった。
そうさせたのは、僕なのに。
ふと彼と目が合った。
あ、と口を開けたヒロ君から逃げるように会社に入って、自分の席に座り、机に顔を伏せて胸がキューッと痛くなるのを我慢する。
午後からは無心で仕事をした。
考えると手が止まりそうだったから。
仕事を終えて家に帰ると膝から崩れるように玄関に座り込んだ。
連絡が無い。だからこっちから連絡をするのもいいのか悪いのか分からない。
玄関先で膝を抱えたまま動けないでいると、スマートフォンが震えた。
驚きながらも慌ててそれを手に取って画面を見る。
「っ、ヒロ君……」
彼からメッセージが来ていて、見ると今から家に行ってもいいかという内容だった。
さっきまで疲れ切っていた気持ちも、それを見て少し明るくなる。
『いいよ』とだけ返事してヨイショと立ち上がった。
彼が来たら先ず、ちゃんと謝って、明日も仕事だけれど……今日は僕もちょっと頑張ろう。
こんな喧嘩を今後しなくてもいいように。
ゴムはあったっけ……と寝室に行って確認する。
残り三個ある。よかった。
手を洗い、ヒロ君が来るまで夜ご飯を作っておこうと、冷蔵庫を開けた。
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