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第16話

「うっま!」 「ね!美味しいね!」 ヒロ君がコロッケを凝視している。 思った以上に美味しくて口角が上がるのを止められない。 「ねえまたこれ作って。すごい美味しい」 「もちろん」 「これ一番好きかも。明日も食べたい」 「余ってるのあるからお弁当に詰める?」 「明日お弁当作ってくれんの!?」 「ヒロ君がいいならせっかくだし……」 「嬉しい!じゃあさ、休憩スペースあるじゃん。あのお茶とかできるところ。あそこで一緒に食べようよ」 会社のビル内に自販機が置かれている場所があって、社員はそこを自由に使えるらしい。 「使ったことないけど、お弁当とか食べていいスペースなの?」 「いいでしょ。普通に食べてる人見た事あるよ」 「ふーん。じゃあそこで」 「うん。明日も楽しみ。」 嬉しそうな彼につられて嬉しくなった。 晩御飯を完食して、お皿洗いを終えたあと、彼と一緒にお風呂に入る。 髪をお湯で流していると、ヒロ君が僕の肩を掴んで椅子を指さした。 「蒼太座って!洗うから!」 「自分で洗えるけど」 「お願いお願い!髪だけでも洗わせて!俺がやりたい!」 これもアルファの本能のせいなのか、ヒロ君にお願いをされて椅子に座ると優しく髪を洗われる。 「頭すっごい凝ってるね。」 「そんなのわかるの?」 「うん。気持ちよくない?」 「すごい気持ちいい。寝ちゃいそう」 頭をグッグッとちょうどいい力で指圧され、うとうとして目を閉じると唇にふにっと柔らかい感覚。 目を開けると背中を屈めた彼がいた。 「ウトウトしてるの可愛くてキスしちゃった」 「……」 「もう一回していい?」 「いいよ」 ちゅっとキスされ、二人してニヤニヤと笑った後、泡を流して体を洗い、重なるようにして湯船に浸かった。

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