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第19話
そんな視線から逃げるように俯く。
やっぱりヒロ君はモテるよなぁ。
見た目だけじゃなく、話をしてみれば優しいし、気遣いもできる。
だからこそ、僕は北田さんの同期の人とヒロ君を会わせたくないわけで。
「それもすごくラブラブなのでやめた方がいいです」
「そっか……」
「そろそろ同棲も考えているらしいので。」
「マジかぁ。わかった。諦めろって伝えとくよ」
「はい」
よし。何とか乗りきった。
ほっと息を吐いて安堵する。
「それにしても、上住君って橋本さんとそんなに仲が良かったんだね。」
「あ、はい。よくご飯に行ったりします」
「何で仲良くなったの?だって総務とはあんまり関わりないだろ。あ、元々知り合いとか?」
「いや、共通の友達がいるんです。その人とご飯に行った時にたまたま会って。それから仲良くしてもらってます」
出会った時のことは今でも鮮明に覚えている。
何度か経験したことのある熱に突然襲われて、過去の失敗を繰り返してたまるかと無我夢中に抑制剤を打った。
「そうなんだ。じゃあその友達も同じ会社の人?」
「はい。専務の秘書の堂山さん」
「おお、知ってる!あの綺麗な人か。友達なんだ?」
「中学の同級生で」
そんな話をしていると、始業時間になった。
北田さんは自分のデスクに戻り、僕はなんだか胸をモヤモヤさせながら仕事を始めた。
■
「──っていうことがあってね。」
「俺ってモテるんだね」
「無自覚なの?」
「いや、知ってた。」
「……嫌な感じ」
昼休み、ヒロ君と待ち合わせしたいたところでお弁当を食べる。
朝の出来事を話せば、どうでも良さそうな様子で早速コロッケを食べている。
昨日と変わらずキラキラした顔で「美味しい」と言ってくれる彼に嬉しくなりながら、僕もコロッケを食べる。
「だからヒロ君に恋人がいて、同棲も考えてるらしいって言っちゃった。」
「いいじゃん。事実だし。」
「噂広まるかもよ」
「いいよ」
「……そっか」
胸にあったモヤモヤは消える。
けれどそれと同時に違う思いが出てきてしまった。
僕だけが世間に脅えて恋人同士だとバレたくないも思っている。
ヒロ君は『お互いの気持ちが大事』と言ってくれたけれど、申し訳なく感じてしまう。
「何、どうかした?」
「ううん」
「嘘。何か悪いこと考えてるだろ。」
「悪いことというか……ヒロ君に申し訳ないなって」
「それなら安心して。蒼太が申し訳なく思わなきゃいけないことは何一つされてないから。」
何ともなさそうな彼に苦笑を零した。
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