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第20話

■ ヒロ君の噂は瞬く間に広がった。 彼自身は気にしていないようだけれど、色んな人が彼を見て、知りもしない恋人に対して羨ましがっていたり、誰か知らないのかと好奇心からソワソワしていたり。 「上住君は知ってるんだろ?どんな人?」 「……橋本さんが好きそうな人」 「だからそれってどんな人!?」 北田さんもそのひとり。 そしてその北田さんのせいで、僕がヒロ君と仲がいいと聞き同じ部署の人達がゾロゾロ集まってくる。 「可愛い系?綺麗系?」 「えぇ……」 気分は良くなかったけれど、蔑ろにするのも良くないので、適当に返事をする。 「き、綺麗……?」 若干調子に乗ってそういえば、先輩はこくこく頷く。 「やっぱり!なんか年上の女性にモテそうだし……」 北田さんがそう言うと、他の人が「可愛い系もお似合いだと思うけど」と言い始める。 「年下を甘やかしてあげてる姿とか……ギャップがあっていいと思う」 確かに。適当に『綺麗』とは言ったけれど、どちらかと言えば僕はそうでも無い。 だからか、彼に甘やかされてはいるし、その自覚もある。そして限度はあるけれど甘やかされるのは気分がいい。 僕自身はそう思うけれど、傍から見たら少し冷たそうな人が甘やかし上手なのは『ギャップがあっていい』という評価になりそうだ。 一人頷いて、この評価のことを後でヒロ君に伝えようと頭の片隅にメモした。

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