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第21話
仕事が終わり、家に帰る。
ご飯を食べて、お風呂に入り湯船に浸かるとジンワリ温まっていく体。
一日の緊張が解れて眠たくなってしまう。
それにしても……
ヒロ君って万人受けする容姿なんだよなぁ。
だからこそなんで僕なんかを好きでいてくれるのか。
正直、運命の番だからなのかなと思うところもあったりして。
過去に自分の行いのせいで色んな人に掛けてしまった迷惑のことを考えると、人と関わることがどうしても慎重になってしまう。
いつか彼は僕じゃない違う人を選ぶんじゃないか……とか。
ヒロ君の事が好きなのに、少しでもそんなふうに思ってしまう自分が嫌だなと溜息を吐いた。
お風呂からあがり、時折欠伸を零しながら髪を乾かして歯を磨く。
これで眠る準備は万端だ。
ちょうど眠たくなってきたことだし、今日は早く寝ようかなとベッドに入ろうとして、スマートフォンが音を立てた。
画面を見ればヒロ君からの着信で、迷うことなく電話に出る。
「もしもし」
「あ、蒼太……寝てた?声、すごく眠そう」
「ううん、起きてたよ。」
「そう?あ、今日俺同じ部署の人に聞かれたよ。恋人いるって本当?って。」
「ああ、そうそう。僕もその噂について聞かれたよ。相手はどんな人?って」
ベッドに寝転がりこうして話したまま眠れたら幸せかも……と思いながらウトウトしていると「何て返事したの?」と聞かれて意識がハッとした。
「綺麗系か可愛い系かって聞かれて……適当に綺麗系って言った」
「へえ?」
「そしたら年上の女性にモテそうって言ってたよ。でも可愛い系を推してる人は年下を甘やかしてる姿はギャップがあっていいって。」
「正解は同い年でしたーってね。蒼太はどっちかって言うと可愛い顔立ちだよね。いや、キリッとした表情の時は綺麗だけど。」
彼の言葉に思わずクスクス笑った。
そんなこと言ったって何も出ないのに。
欠伸を噛み殺し、眠たくなってきた頭で会話を続ける。
「ヒロ君は綺麗な顔立ちだと思う」
「好き?」
「うん。好き」
「俺も。蒼太が好き。……ねえ、もう眠たい?声がとろーんってしてるよ」
「ん、眠たい」
今度は我慢せずに欠伸をして、ヒロ君が話している声を子守唄に、夢の中に落ちた。
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