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第33話
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家に帰るともう夕方で。
ヒロ君は今日このまま泊まるのかな?と、一緒にキッチンに立ってご飯を作る彼に顔を向ける。
「ねえ見て!変な形の唐揚げ!」
「ホントだ」
楽しそうにケラケラ笑ってる姿に、つられるように笑う。
「今日は泊まるの?」
「泊まっていいの?」
「いいよ」
ぱあっと嬉しそうな顔。
その顔、好きだなぁ。
「今日は本当充実してるなぁ。朝から蒼太とずっと一緒だったし、久しぶりに美波にも会えたし。」
「……そうだね」
モヤ、と嫌な感覚が広がる。
ヒロ君が仲良さげに宇垣さんのことを美波って呼ぶのは、あんまり気分が良くない。
けれど、久しぶりに会えたならそりゃ嬉しいだろう。
さっき『わかってる』とも言ったし、ここで不機嫌になるのはきっと幼稚だ。
「久しぶりに会えるのって嬉しいよね。よかったね」
「うん」
「今度出かけてきたら?」
「んー……ちょっとご飯食べに行くとかはあるかも」
「いいよ。でもその時は教えてね」
カラッと揚がった唐揚げをお皿に盛り、テーブルに置く。
「俺と美波がご飯行くの、嫌じゃない?」
「うん。大丈夫」
「前は怒ってた」
前って……濱田さんの事を言ってるんだな。
「だってヒロ君と宇垣さんは友達なんでしょ?友達とご飯に行くのは普通のことだし、怒らないよ。」
納得したのか、ヒロ君はフムフムと頷く。
「蒼太が俺のこと、すごく信頼してくれてて嬉しい。」
後ろからギュッと抱きつかれる。
いつもならただ幸せを感じるのに、今日はやっぱりなんだかスッキリしていない。
お腹に回されている手をポンポンと叩いて解放してもらう。
ぐいっと無理矢理口角を上げて「ほら、続き。手動かして」とキッチンの台を指さし、この話題を切った。
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