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第35話
「ん……蒼太ぁ……?」
「ヒロ君起きてよぉ」
さすがに少し重たかったのか、ヒロ君が薄く目を開ける。
また目を閉じようとしたから肩に頬を擦り寄せた。
「もうちょっとでお風呂沸くよ。全部終わってから一緒に寝ようよ。ね?」
「……ぇ、何、とんでもなく可愛い。甘えてるの?蒼太がこんな事するの珍しすぎて目が覚めた。」
太腿に掛けてある僕の足を撫でたヒロ君は、ぐるっと僕の方に体ごと顔を向ける。
「寝ちゃってごめんね。」
「ううん。いいよ。」
なんていったって、寝顔の写真が撮れたし。
言ったら消してと言われるかもしれないから、黙っておくことにする。
「あ、そうだ。片付け……」
「もうしたから大丈夫だよ。」
「うわ、本当ごめん。」
「気にしないで」
少しあった隙間を埋めるように密着する。
お風呂が沸くまで、このままでいたい。
「今日の蒼太は甘えただね」
「こうやってベタベタされるの嫌い?」
「まさか!蒼太がしてくれるなら嬉しい」
背中に手が回って額にちゅっと唇が落とされる。
こうして触れていれば、モヤモヤを感じることは無い。
大好きな人の香りが、やきもきしていた心に安心をくれる。
この温もりがあれば、過去に彼がどれだけ多くの人から恋心を抱かれても、今のヒロ君は間違いなく僕の恋人なんだと感じられた。
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