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第36話

■ 翌日。 朝、目を覚ますと先にヒロ君が起きていた。 「……おはよ」 「うん、おはよぉ」 朝の甘い優しい空気が好き。 彼は緩く微笑んで「起きる?」と聞いてくる。 「今何時……?」 「七時。──あ、寝るの?」 「あとちょっとだけ……」 ぐるっと寝返りをうち、彼に背中を向ける。 ピタッとくっついてくるヒロ君。 「今日何するの?」 「……ん、わかんない」 「蒼太ぁ」 「ねえもうちょっと寝かせて」 後ろから頬を突かれたり、手を握られたり。 何かとちょっかいをかけてくる彼にちょっとずつイライラしてくる。 「もぉー……」 「あ、起きた?」 「……顔洗ってくる」 「俺も行く」 「じゃあ先行って」 ムスッと洗面所の方を指さすと、ヒロ君は『ヤベッ』と顔を歪ませる。僕がイライラしたのがわかったらしい。そそくさとそっちに向かったのを見てから、上体を起こしフワフワ欠伸をして枕元に置いてあったスマートフォンを手に取る。 「あ、違う。これヒロ君のだ」 画面をタップして壁紙がいつもと違うことに気がついて、元あった場所に戻そうとしたのに、ふと『宇垣美波』という文字と、彼女から送られてきたメッセージのリストが目に入った。 またどうせ胸がモヤモヤするんだから読んじゃダメだと思うのに、スマホを放すことができなくて、画面をまじまじと見てしまう。

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