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第41話
「蒼太?大丈夫?」
「え、何が。大丈夫だよ」
「顔色ちょっと悪いけど」
伸びてきた手をすっと避けるように横を向いて、コップに入ったお水を飲む。
「あ、あれ僕達のじゃない?」
「え……」
たまたま目に入った店員さんが料理を運んでくる姿。
多分あれは僕たちの頼んだやつだとヒロ君に顔を向けると、少し傷ついたような顔をしていて、胸がジクリと痛む。
思っていた通り、料理が運ばれてきて、いつもより口数少なく昼ご飯を食べた。
■■■
夕方。仕事を終えて真樹と待ち合わせに会社のロビーにあるベンチに座って待っていると、真樹がパタパタと走ってやってきた。
「ごめん!お待たせ!」
「走らなくてよかったのに。仕事、お疲れ様」
「蒼太もお疲れ様」
中学生の頃、僕に初めて訪れた発情期。
タイミング悪く、その時一緒にいたのは真樹で。
当時はアルファだった彼をわけも分からず襲いそうになったことがある。
とても優しかった彼はその出来事からオメガが苦手だったらしいけれど、性格は変わらず優しくて。
街で突然発情期になった女性を助けて、それをきっかけに自身もオメガになったらしい。
それからも色々なことがあったみたいだけれど、今は専務──嘉陽凪さんが番になって穏やかな日々を過ごしていて幸せに見える。
「蒼太にご飯誘われることあんまりないから嬉しかった。凪さんが楽しんでおいでって。」
「話を聞いてほしくなって」
「うん。いっぱい話そう。どこに行く?」
そうしてビルを出ようと出入口の方に目を向けた。
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