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第42話
「──ねえ、あれって橋本さんじゃない?隣にいる人彼女かな!?」
不意にそんな言葉が聞こえてきて、バッと辺りを見渡す。
そして視界に映ったのは、ヒロ君と、ヒロ君の腕に腕を絡ませる女性──宇垣さんの姿。
「……あ、蒼太……大丈夫……?」
真樹も同じ光景を見たらしく、様子を伺うように声を掛けてくる。
「……大丈夫。久しぶりに再会した友達なんだって。大丈夫。」
「ご、ご飯!ご飯行こう!何食べる!?肉?肉にしよう!ガッツリ食べよう!」
「うん」
二人が歩いていく背中をぼんやり眺める。
ヒロ君と宇垣さんは仲が良かったみたいだし、パーソナルスペースが狭い人はいるし、『なんともない』って言ってたし、大丈夫。
「ねえ真樹」
「ん、何?」
ご飯屋さんに着いて、お肉を食べながらグルグル考える。
「浮気ってどこから?」
「え……!」
ジッと料理を見て、ゆっくり真樹に視線を向けた。
真樹は気まずそうに視線を逸らした。
「別に友達と腕組んでるのは浮気じゃないよね。」
「あ……うん。友達となら浮気じゃない」
「それが異性でも、そうだよね?」
曖昧に頷く真樹。
多分、専務のそういう姿を創造して嫌な気持ちになったんだろう。
「さっきヒロ君の腕を組んでた人、宇垣さんっていってね。ヒロ君と同棲しようってこの間行った不動産でたまたま働いていて、たまたま僕たちの担当になった人なんだ。」
「同棲!そっか、二人はまだ別々で暮らしてたもんなぁ。」
「うん。それで……ヒロ君のこと『洋哉』って呼びそうになってたし、ヒロ君だって彼女のこと名前で呼ぶし、『連絡していい?』とか……。今日もご飯行くって言ってて、いいよって言ったのは僕だけど、ああいう姿を見せられてモヤモヤしてる。」
お肉を口に入れる。
美味しい。
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