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第44話
「んー……真樹はさぁ、中学生の時オメガだった僕にもすごく優しくて、そういうところ大好きだった」
「ありがとう。蒼太ってもしかしてお酒にすごく弱い?一杯しか飲んでなかったのに……」
バッグから財布を出して、上手くお金が取り出せずにそのまま真樹に渡す。
「ごめん、これ、適当に払ってほしいな」
「それカバンに戻してね。それから、ここに座っててくれる?」
「はーい」
返ってきた財布をバッグに入れ、真樹に指定された椅子に座ると、彼は少し僕から離れて、暫くして戻ってきた。
肩を貸してもらってお店を出る。
少し歩いて真樹に案内されるがまま、公園のベンチに腰かけた。
「真樹の家に、今度遊びに行きたいなあ」
「俺の?いいけど、凪さんにも聞いてみるね。多分いいって言うし」
「専務ってかっこいいよね」
「うん。」
「真樹とお似合い。二人とも、優しいし、専務のことも好きだよ」
「伝えておくね。凪さんも喜ぶよ」
頬を撫でるひんやりとした空気が気持ちいい。
ぼんやりしていると頭の中にヒロ君と宇垣さんの姿が浮かんで、隣にいる真樹の腕に自分の腕を絡めてみた。
「え、蒼太?」
「こんなに密着するのに、友達?」
「……」
「僕ね、あんまり知られたくないんだ。ヒロ君が誰かと触れ合ってるの、本当はすごく嫌だって。嫉妬深いのバレたくない」
腕を離して、空を見る。
今日はあんまり星が見えない。
「ごめんね、腕、抱きついて。」
「ううん。蒼太ってちょっと……馬鹿だよね」
「え、なんで、急に悪口言われた。腕抱きついたの怒ってる?」
「いや全く怒ってないよ。だってさ、嫌われたくないから平気なフリしてるんでしょ?橋本なら多分『嫉妬してる蒼太が可愛い』って言うと思うよ。それに、そんなに悩むなら初めから『いいよ』じゃなくて『嫌』って言えばよかったのに。」
「それはそう。」
正論を言われてしょんぼりしてしまった。
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