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第45話
そう話していると、真樹が突然公園の外を見て「あ」と言った。
その視線を追いかけるとそこには焦った様子のヒロ君が。
「え、何でヒロ君……?」
「もぉ……心配したじゃん。酔っ払って一人で帰れなさそうって電話あって……」
「前に橋本が俺にしてくれたこと、ここでお返ししてみた。」
真樹がニコニコ笑って言う。なんのことか分からないけど、ヒロ君は理解したのか「なるほど……」と言ってしゃがみ込み、僕の太腿に手を置いて「帰れそう?」と聞いてくる。
「宇垣さんは……?」
「とっくに別れたよ。今何時か知ってる?」
「あー……九時とか?」
「十時前だよ。」
そのまま僕の膝にトンと額をつけて「はぁー……」と溜息を吐く。
「俺が橋本に連絡したんだ。足元ふらついてるから一人じゃ危ないなって思って。」
「知らなかった……ていうかもう十時になるの?ごめんね、真樹。長い間付き合わせて……」
立ち上がる真樹につられるように立つと、フラっとして前にいたヒロ君に咄嗟に手を伸ばし抱きつく。
「蒼太何杯飲んだの?」
「一杯」
ヒロ君と真樹の会話しているのも気にせずに、ヒロ君の胸に耳をつけて心臓の音を聞いていた。
走ってきたのか、ちょっと鼓動が速い。
「ヒロ君、走ってきた?心臓バクバクすごいね」
「だってそんなに飲んだのかと思って心配した。……今日このまま蒼太の家泊まるね。」
「ぁ、うん。ありがとう」
「……はぁ。帰ろう。堂山は?一人で平気?送ろうか?」
「あー……実は凪さんから帰る時に連絡してって言われてて、もう近くに来てる。」
「それなら安心だ」
背中をトントン叩かれ、体が離される。
じっと目を見てきた彼は「歩ける?」と聞いてきたので、大きく頷いた。
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