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第48話

「真樹に言われた。初めから『嫌』って言えばよかったのにって」 「俺が久しぶりに会えたって言ったから気遣ってくれたんだろ。でも、嫌って言われても嫌いにならないよ」 「うん」 家に帰ってから改めて話をした。 一緒にお風呂に入って、お互い思っていたことを話して、体も気持ちもさっぱりして。 「あ」 「何?」 髪を乾かしてもらっている最中、昼間のことを思い出して振り返る。 「あの僕、昼間ヒロ君の手を避けて……」 「あ、あれ。俺実はめちゃくちゃ凹んでた」 苦笑した彼に慌てて謝る。 「ご、ごめんね、本当酷いことした。」 「いいよ。それだけ不安にさせちゃったのは俺だから」 「い、今触る?」 「何だそれ」 くすくす笑われて、僕も同じように笑えば彼の手が頬に触れる。 「顔色、良くなった。」 「ん」 「でもいつもより赤いね。」 「お酒飲んだから」 まだ若干の浮遊感がある。 顔が近づいてきて、自然と口角が上がった。 「そうだった。今は?気分悪くない?」 「大丈夫」 返事をすれば触れるだけのキスをされて、それがただ嬉しかった。

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