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第53話

■■■ 会社の近くまで手を繋いだあの日。 とてつもなく嬉しそうだったヒロ君。 そんな彼を思い出す度、我慢のさせすぎはいけないんだと考えが変わってきた。 「ねえ蒼太ぁ」 「何?」 仕事が終わり、ヒロ君と僕の家に帰る。 昼間にヒロ君の前で今晩はハンバーグを作ると零すと、彼はすかさずに食べたいと言った。 玉ねぎを刻んで炒めていると、そっと抱きしめられて甘えるように僕の肩に顔を埋める。 「土曜日さ、家、見に行く予定じゃん……?」 「ああ、うん。そうだね」 その言葉で思い出すのは宇垣さん。 なんだか変な態度をとってしまいそうだ。 勝手に二人の関係を疑って、勝手に落ち込んだだけのくせに。 「あれ、延期してもいい?」 「え、どうして?何かあった?」 「……ちょっと、言い難いんだけど……」 ヒロ君はそう言ってスマホの画面を見せてくる。 なんだろう?と画面を見ると、そこには宇垣さんとのメッセージのやりとりがあった。 「一回ご飯行っただろ?……実はあれから度々連絡が来てて、また行こうって誘われててね。仕事が忙しいって断ってはいるんだけど……」 確かに、ヒロ君が断った後も『遅くても大丈夫』だとか、『お昼は?』とかのメッセージが送られてきている。 最後には宇垣さんからの不在着信が。

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