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第53話
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会社の近くまで手を繋いだあの日。
とてつもなく嬉しそうだったヒロ君。
そんな彼を思い出す度、我慢のさせすぎはいけないんだと考えが変わってきた。
「ねえ蒼太ぁ」
「何?」
仕事が終わり、ヒロ君と僕の家に帰る。
昼間にヒロ君の前で今晩はハンバーグを作ると零すと、彼はすかさずに食べたいと言った。
玉ねぎを刻んで炒めていると、そっと抱きしめられて甘えるように僕の肩に顔を埋める。
「土曜日さ、家、見に行く予定じゃん……?」
「ああ、うん。そうだね」
その言葉で思い出すのは宇垣さん。
なんだか変な態度をとってしまいそうだ。
勝手に二人の関係を疑って、勝手に落ち込んだだけのくせに。
「あれ、延期してもいい?」
「え、どうして?何かあった?」
「……ちょっと、言い難いんだけど……」
ヒロ君はそう言ってスマホの画面を見せてくる。
なんだろう?と画面を見ると、そこには宇垣さんとのメッセージのやりとりがあった。
「一回ご飯行っただろ?……実はあれから度々連絡が来てて、また行こうって誘われててね。仕事が忙しいって断ってはいるんだけど……」
確かに、ヒロ君が断った後も『遅くても大丈夫』だとか、『お昼は?』とかのメッセージが送られてきている。
最後には宇垣さんからの不在着信が。
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