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第54話
ちらっと僕を見る彼は不安げだ。
「僕はいいけど……連絡、宇垣さんからの電話で終わってるけど、大丈夫?」
「……あんまり反応するのもなぁって」
「あ、僕が連絡取るの嫌だって言ったから……?」
「それもそうなんだけど、忙しいって言った手前すぐに返事するのも変だし……。」
「そっかぁ」
ヒロ君はスマホをテーブルに置いて、「ごめんね」と言ってくる。
謝られたことで慌てて火を消して、ヒロ君に向き直った。
「謝らないでよ。ヒロ君は僕の言ったこと気にかけてくれてたんだし、相手から連絡が来るのは仕方の無いことだし。」
宇垣さんも久々に友達に会えて嬉しいんだ。
勝手に下心があるとか、そんなこと考えるのは失礼だ。
「で、家見に行くのは延期ね。僕が別日でって電話しておこうか?」
「いや、俺がする。ありがとう」
「……あの、もし、必要だったら、だけど」
「ん?何?」
我慢のさせすぎはいけないと思ったところだ。
このままヒロ君がズルズルと悩むくらいなら、僕が妥協をすればいいだけの事。
「僕と付き合ってるから、って……言っても大丈夫。」
「え……?」
「それでわかってくれるなら、知られてもいいよ。」
そう言って微笑むと、ヒロ君は目をパシパシとさせたあと、じっと俺を見て何か考える素振りをした。
ぐっと腕を掴まれ、視線が絡む。
特別変なことを言ったつもりはないから、戸惑ってしまって視線を逸らした。
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