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第55話
「ねえ、無理してない?」
「ぁ……えっと、無理は、別に……」
「本当?あれだけバレたくないって言ってただろ。」
「だって……言わなきゃいけない時もあると思うし……。だから無理じゃないよ」
「……わかった。ありがとう。そう言ってくれたの、すごく嬉しい。」
ムギュっと強く抱きしめられる。
段々苦しくなってきて、ヒロ君の背中をトントン叩きながら「苦しいぃ!」と伝えるとすぐに解放された。
彼の顔にはニヤニヤとした笑みがあって、わざとらしく唇を尖らせる。
そのままちらっと時計を見て、焦ってご飯作りを再開した。
「ちょっと遅くなるかもしれないから、お腹すいて我慢できなさそうだったら、そこにあるバナナでも食べておいて」
「我慢できるから大丈夫だよ」
「そう?あ、そうだ。今日泊まる?」
「あー、うん。泊まろうかなあ」
「じゃあお風呂のお湯抜いてきて」
「はーい」
廊下に消えた彼を見てから、無駄に入っていた肩の力を抜く。
少し緊張した。
知られてもいいと言う時、喉がキュッと狭苦しく感じて若干声を出しにくかった。
小さく息を吐いたあと、フライパンを火にかけた。
そうしてしっかりと炒め終えた玉ねぎの粗熱をとって、ひき肉の入ったボールに入れ、パン粉と塩胡椒、それから砂糖にニンニクを入れてコネコネと混ぜた。
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