58 / 143

第58話

「あ、蒼太、寝るなよ」 「……寝ないよ」 「嘘だぁ。目が半分閉じてた」 「ヒロ君早く洗ってこっち来てよ」 「俺も早くそっちに行きたいよ」 浴槽の縁に腕を乗せ、そこに顎を置いてヒロ君と話をする。 眠気のせいでポツポツ返事をしていると、ようやく彼がこちらに来て、僕と重なるようにして湯船に浸かる。 「蒼太いい匂い」 「んー、髪?同じシャンプーだよ」 「そうなんだけど、なんか違うんだよな……」 洗ったばかりで濡れている髪に顔を寄せ、クンクンと匂いを嗅がれる。 体をずらし彼の肩に頭を預けるようにして見上げる。 視線がバチッと合うと、そっとキスをされて口角がユルユルと上がっていく。 「もう一回して」 「どうしよっかなあ」 「いいよ、僕がしてあげる」 ヨイショっと体を起こして、振り返る。 しっとりした肌に手を着いて、触れるだけのキスをすると、それだけでヒロ君は嬉しそうだ。 「っ!お尻触らないで」 彼の手がすかさずお尻に触れて、軽く掴まれる。 「揉みたくなる」 「やだよ」 「今日はエッチだめ?」 「……」 「お、揺らいでる」 ちゅ、ちゅ、と頬に鼻に、額に唇が触れる。 ぐっと顔の真ん中に力を入れて『考えています』をアピールする。 「んー……」 「何その顔。めちゃくちゃ可愛い」 ぎゅっと抱きしめられて「ダメ?」ともう一度聞かれると、ダメとは言えなかった。 「……うん。いいよ。僕もシたくなった」 そう口にした途端、僕を抱きしめたまま立ち上がったヒロ君は、バスタオルで簡単に体を拭いたあと、僕を抱っこしてベッドまで運んだ。

ともだちにシェアしよう!