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第63話

「っ!ビックリした……」 「ん、おはよぉ。お風呂入ったの?」 腰にぐりぐりと頭を押し付けてくる彼。 ヨシヨシ頭を撫でてあげると、眠たそうな顔でふんわり微笑む。 「シャワーだけ浴びてきた。今日お弁当作ろうと思うけど、ヒロ君は?どうする?」 「食べる……」 「わかった。用意するね」 「……もうちょっと寝ててもいい……?」 「いいよ」 本来ならグチャグチャだったはずの僕の体も、起きた時はそうじゃなかったから、終わったあと彼が一通り片付けてくれたんだと思う。 腕が離されて、そっと立ち上がりベッドから離れる。 お弁当もだけれど、朝ご飯は何にしよう。 無難にご飯と味噌汁でいいかな、とお弁当を作りながら考える。 そのうちヒロ君がフラーっと横を通ってシャワーを浴びに行き、また暫くして戻ってきた彼は僕の背後に立って「いい匂い」と後ろから覗いてくる。 「今日のお弁当ね。ガレット作ってみた」 「ガレット?何それ」 「ジャガイモだよ」 「パリパリのやつ?美味しそう」 「うん。楽しみにしててね。……あ、コーヒーでも飲む?」 「飲みたい。あ、でも自分でやるよ。蒼太もいる?」 頷くとヒロ君は僕の邪魔にならないようにとキッチンの隅っこでコーヒーをいれる。 平日の朝なのに穏やかだ。 一切焦ることの無い平和な時間が嬉しくて、同棲を始めたらこういう時間がもっと増えるんだろうなと、そんな未来を想像するだけで楽しくなった。

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