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第64話

二人で通勤するのは今まで何度もしていること。 隣に並んでたわいもない話をする。 一緒にお昼を食べようとか、今日はお泊まりはしないとか。 「明日は元々内見に行く予定だったけど、それはやめるから、別のどこかに行く?それとももう今週はやめる?」 何の気もなしにそう言うと、彼はピシッと音がしたんじゃないかと思うほど綺麗に固まった。 「やめるってのは……会わないってこと?」 「うん。だってたまには一人の時間も必要じゃない?」 「一人の時間……。えぇ……?俺、蒼太と一緒にいたい……」 寂しそうな声音に申し訳ないことをしてしまった気になる。 「あ、いや、僕もそうなんだけどね。最近はずっと一緒にいるから一人になりたい時もあるかなって思ったんだよ。でもまあ、大丈夫そうだね!一緒に過ごす?」 「過ごす!」 嬉しそうな彼を見て吹き出すように笑ってしまった。 僕のことが本当に好きなんだとわかる。 「俺の家くる?あ、というか今日は蒼太が俺の家に泊まればいいじゃん!」 「そうしようかなあ」 「そうしよう!」 「はは、うん。そうするよ」 顔を覗き込んできたヒロ君が、目を細めて笑う。 その顔が可愛くて、頭をワシャワシャ撫でると、抵抗せずにそれを受け入れていて、相も変わらずゴールデンレトリバーのようだった。

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