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第66話
お昼休憩にルンルン気分でヒロ君と会う。
空きスペースに座り、お弁当を広げた。
「それでね、仕事任せて貰えてね、すっごく嬉しくてね!」
「うん。めちゃくちゃ嬉しそう。おめでとう蒼太」
「ありがとう!社会に出てから差別されてきた人生だったから、まさか任せてもらえるなんて思ってなくて……。転職してよかった。前の会社じゃこんな幸せ感じられなかったと思うから」
興奮して早口で話す僕を、優しい目で見るヒロ君。
本音を言えば頭を撫でてもらったり、抱きしめてもらったり……そういうスキンシップがほしい。
けれどここは会社。そして僕達は男同士。
そんなことが出来るわけがなくて、なんだか少し寂しい気持ちになる。
「夜はお祝いだね。ケーキ買って帰る?」
「ケーキ!食べたい!」
「うん。一緒に買いに行こうね」
「ありがとう」
「早くお昼食べちゃお」
いつもよりずっと落ち着いた様子の彼に引っ張られるように、僕の気持ちも落ち着いていく。
お弁当を食べ終えて、フゥ……と息を吐いたところで、ヒロ君に手を引かれてすぐ近くのトイレに入った。
「え、何、どうしたの?」
「ヨシ。」
そして中に誰もいないことを確認すると、ギューッと痛いくらいに抱きしめられる。
それからチュッとキスをされて目をパシパシさせながらもう一度、「……どうしたの?」と思わず同じ言葉が零れた。
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