67 / 143
第67話
「いや……嬉しそうで可愛くて思わず……。あんなオープンなスペースじゃできないから、連れ込んじゃった。ごめんね」
「あ、いや……」
「頑張ってね。応援してる。でも蒼太って頑張りすぎるところがあるから、無理しないようにしてね。何かあれば頼って。できることは手伝うよ」
目尻を下げて、柔らかい優しい笑顔に嬉しくなって自然と口角が上がる。
「ありがとう!」
「お」
ギューッと今度は僕から強く彼を抱きしめる。
背中をポンポンと撫でられた後、彼の両手が僕の顔に触れて頬をぐにぐに捏ねるように包まれた。
いつもならやめてよって止めているところだけど、今日は甘んじてそれを受け入れる。
むしろもっと甘やかしてほしいくらいだ。
だけど我慢。
そっと離れて「ケーキ、楽しみ」と言うと「ロウソク何本つけよっか」と笑って返してくれる。
「誕生日じゃないよ」
「でもケーキだぜ?ロウソクつけたいじゃん」
「一本ずつ立てる?」
「え、何言ってんの?ホールケーキ買うから一本ずつじゃ間に合わないよ」
「ホールケーキ買うんだ……!?」
「当たり前だろ。お祝いごとじゃん」
たった二人なのにホールケーキを買うとは思っていなかった。
「プレートも描いてもらお」と言う彼に、大袈裟だなと思う反面、そうやってお祝いしてくれる彼がとても愛おしかった。
ともだちにシェアしよう!