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第69話

着いたケーキ屋さんでヒロ君がホールのショートケーキを買ってくれる。 ロウソクと、おめでとうのチョコプレート付き。 お会計の時に見せてもらったケーキが嬉しくて、思わずヒロ君の腕にくっつく。 「ありがとう!すっごい美味しそう!」 「うん。家でゆっくり食べようね」 ケーキを受け取ってお店を出る。 家まであと少し。 楽しくてスキップしたいくらいの気持ちで歩いていると、「洋哉!」とヒロ君の名前を呼ぶ高い声が聞こえてきた。 咄嗟に振り返ると、そこには宇垣さんの姿が。 驚いて固まる僕達に構わず、彼女はそばまでやってくる。 「今日ここら辺で仕事あったの!たまたま会えて嬉しい!」 「あ、うん……」 「あれ、上住さんは何で?」 首を傾げて聞いてきた彼女に、適当に返事しようとして、ヒロ君が僕の名前を呼んだ。 彼を見るとじっと目を見つめられて、開けようとした口を閉じる。 「俺達付き合ってるんだ。今日は蒼太が俺の家に泊まるから、それで。」 「え……付き合ってるって、男同士でしょ?」 「うん。でも俺が好きになったから、性別とか関係無くて。」 「……」 「ごめん。今日いいことがあって、これからお祝いするから急いでるんだ。じゃあね」 ぐいっと手を引かれて慌てて足を動かす。 ヒロ君が速く歩くから、僕も足をせっせと前に出す。 ついつい彼女が気になって振り返ると、まだ僕達を見ていた。 その表情は何を思っているのか、全く検討がつかなかった。

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