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第71話
『連絡ほしい』
『なんで無視するの』
『ご飯行かない?』
『何でキャンセルしたの?』
『家に行ってもいい?』
『不在着信』
『不在着信』
『不在着信』
ゾッとしてスマホを彼に返すと、ヒロ君は苦笑して「怖いよね」と言う。
「前より酷くなってない……?」
「うん。だから、たまたまあそこに居たんだとしても……なんだか、怖くて……」
膝に置かれた彼の手をそっと握る。
不安からか酷く冷たくて、温めるように優しく摩った。
「宇垣さんは、ヒロ君のこと、好きでたまらないんだね……?」
「学生の頃はそんなんじゃなかったのに……」
「どうしたらいいんだろう……はっきり伝えるのも怖いよね。逆上されたらって考えると……」
「……ごめんね、巻き込んで」
「巻き込まれたんじゃないよ。初めから僕とヒロ君と宇垣さんの話だから」
ああ、焦っていたからケーキは廊下に置きっぱなしだ。
お祝いする予定だったけど、そんな気分じゃないな。
ご飯はどうしよう。今からヒロ君が食べたいものを作ろうか。
「とりあえず、ヒロ君はちょっと休んでてね。怖いのが落ち着いたら一緒に考えよう」
そう言って立ち上がろうとして、ヒロ君が強く僕の手を握る。
驚いて中途半端な体勢で固まり、彼を見下ろす形になった。
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