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第74話

■ 夜は甘い時間を期待していたけれど、それは無さそうだなと思いながら、使い終わったスプーンを洗う。 結局ワンホール全てを食べ切ることは出来なくて、残りをお皿に移し替えて冷蔵庫に入れた。 背中にヒロ君の視線を感じる。 冷蔵庫を閉めてくるり振り返ると彼と目が合う。 「お風呂どうする?沸かしてこようか?それともシャワーにする?」 「俺が沸かすよ」 「一緒に行く?」 「……もうそのままシャワー浴びちゃお」 「あはは、そうだね。沸かすのやめよ」 ヒロ君が立ち上がって傍に来る。 一緒に脱衣所に行って、お互いの服を脱がし合って縺れるようにお風呂場に入った。 シャワーを浴びようとして手を伸ばすと、背中にピタリとくっついてくるヒロ君に先にそれを取られる。 「洗ったげる」 「じゃあ僕も」 頭からいきなりお湯をかけられて思わず「ぶっ」と吹き出してしまう。 「いきなりはひどいじゃんか!」 「ごめんごめん。髪洗うよ」 いきなりお湯をかけたくせに、髪を洗う手つきは優しい。 たくさんの泡が立ってそれを上手い具合に整えられる。 「じゃーん!猫耳!」 「……可愛くない」 「ええ?猫だぜ?蒼太と猫耳なんて可愛いの二乗だろ」 「いや、きついって……」 顰めっ面をしてやると彼はククッと笑ってキスをしてくる。 「もう流して」 「はーい」 そうして二人でシャワーを浴びて、すっきりさっぱりお風呂場を出た。

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