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第75話
お風呂からあがり、髪を乾かして歯を磨く。
もう後は眠るだけ。
彼は酷く疲れた様子で、ベッドに寝転がるとそのままぼんやり宙を眺めている。
そんな彼の隣に寝転んで、そっと体をくっつけた。
「ヒロ君、眠れそう?」
「うん」
「何かあったら起こしてね」
「ありがとう」
「くっついててもいい?」
「んー……こっちの方がいい」
ぎゅーっと抱きしめられる。
苦しくて腕を叩くと力が緩められた。
こめかみ辺りにチュッとキスをされて擽ったい。
「明日はゆっくり起きようね」
「うん。昼からでもどこか行く?蒼太が行きたいところあるならどこでも行くよ」
「んー……明日の朝、起きてから決めるよ」
「そうだね」
手をにぎにぎとしてくる彼は眠たいのか、フワフワ欠伸をしている。
僕の頭に鼻をつけた彼がスンスン匂いを嗅いで、「やめてよ」と伝えると「いい匂い」と止めることなく匂いを嗅いでくる。
「甘い匂い、すごく好き、これ。」
「甘い匂いのものなんて使ってないけど……」
「んー……発情期の前とか……?」
そう言われ、発情期が来るかもしれない驚きと嬉しさに胸がバクバクする。
「え、そ、そういう匂い?フェロモンの匂いがするの?」
「昨日もしてたよ。でも、昨日の方が濃かったかも?いつもより敏感だった気もするし、すっごい濡れてたしね」
「は、恥ずかしいこと言わないで!」
両手で顔を覆う。
身体中がカーッと熱くなった。
「あ、じゃあ……抑制剤飲んだ方がいいのかな」
でもすぐに冷静になって、薬を事前に飲んでおく方がいいのかとヒロ君に聞いてみる。
発情期が来なくて悩んでいたけれど、来たら来たで、その時と場所によっては大変な場合もあるから。
「んー……とりあえず明後日までは飲まなくていいんじゃない?一緒にいるし。俺は念の為に飲んでおくよ。フェロモンに充てられて蒼太に嫌なことしちゃわないように」
「じゃあ……そうしようかな。」
「うん。安心してね」
「ありがとう」
僕からも彼に抱きついて、そっと目を閉じる。
温かい体温に包まれて、あっという間に眠りに落ちた。
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