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第78話
「……電話鳴ってるよ」
「……ん」
凄く嫌そうに顔を顰めた彼。
僕から手を離してスマホを手に取った彼は、頬を引き攣らせる。
「ごめん。ちょっと……電話出るね」
「……宇垣さん?」
「うん。今朝からずっと『ごめんなさい』ってメッセージ来てて、無視してたんだけど……ちょっと、うん。」
顰めっ面のまま俯いた彼に、電話はあんまり聞かれたくないのかもと思って、ソファーから立ち上がる。
「わかった。僕はあの……ベッドいるね。もう一眠りするから気にせずに電話してね」
「……ごめんね。」
「何かあったら起こしてね。」
「うん」
何を話すのか気になるけれど、我慢してベッドに戻った。
『もしもし』と向こうから電話に出る彼の声が聞こえる。
何を話しているのか、それ以上は何も聞こえてこない。
悪いことが起きなければいいのだけれど。
「……はぁ、体重たいなぁ」
ゴロンと寝転んで、深く息を吐く。
項に手を回して、返事ができなかったことが少し悔しくなった。
『ヒロ君と番になりたい。』
そう伝えたかったのに。
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