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第79話
いつの間にか三度寝に突入していたようで。
気がつけば一時間が経っていた。
さすがに電話は終わっているだろうと思ってリビングに行けば、ヒロ君は変わらずソファーにいた。
「ヒロ君、電話大丈夫だった?」
「あ、うん。大丈夫。もうあんまり連絡しないようにするって。ごめんなさいって電話だったよ。」
「そっか。それならよかったけど……終わったなら起こしてくれたらいいのにぃ」
「ごめん、声掛けたんだけど、結構しっかり寝てたからさ。」
彼の隣に座り、さっきしたように擦り寄る。
お腹がグゥと音を立てて、そういえばお昼をとっくに過ぎていることに気がついた。
「ご飯作るね。冷蔵庫にあるもの、勝手に使っていい?」
「うん。ありがとう。」
「ちょっと待っててね」
キッチンに立って冷蔵庫の中を見る。
いつもの如く、ヒロ君の家にはあんまり食材がないけれど、なんとかチャーハンくらいは作れそう。
お米はパックの物があったのでそれを使ってなんとかチャーハンを作った。
ヒロ君はそれを嬉しそうに食べてくれる。
僕もそれを黙って食べながら、宇垣さんとヒロ君の電話の内容について考えていた。
あんなに連絡するほどヒロ君に執着していたのに、そんなにすんなりと諦められるものなのか?
諦めてくれるならそれはありがたいけれど、それなら電話の前に何度も『ごめんなさい』のメッセージを送ってくるだろうか。
普通なら一通送って、返事が来るのを待つはずだ。
本当にこんなにもあっさり終わったのかと、不安がまだ燻っている。
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