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第80話
「宇垣さん、怒ってなかった?」
「うん。蒼太にも謝っておいてほしいって。」
「そっか」
そんな気持ちのまま、黙々と食べているとヒロ君がふんわり笑顔を見せた。
「チャーハン美味しいね。冷蔵庫ほとんど何も無かった気がするのに天才だ」
「……そんなに美味しい?」
「うん。お嫁さんになって」
「どうしよっかなぁ」
話題を全く違う方向に持って行った彼。
あんまり引き摺るのもよくないと思って、明るい声で返事をした。
そうすれば釣られるように気持ちも明るくなってきて、二人でワイワイ話しながらご飯を食べ終え、キッチンに並んで食器を片付ける。
「そういえば、匂い薄くなった?」
「本当?……あ、でも確かに。ちょっと怠かったの、マシになったかも……?」
「俺が薬飲んだからかもって思ってたけど……。蒼太は薬飲んだ?」
「飲んでないよ」
フェロモンが濃くなったり薄くなったり。
今回はもしかしたら発情期はこないかもしれないな。
そんなことを思いながら濡れた手を拭き、先にキッチンを出た。
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