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第83話

「大丈夫。ねえそれよりさ、今日も遅くなりそうなんだよね。夜ご飯一緒に食べに行くって言ってたけど、ちょっと難しそう。」 「わかった。気にしないでいいから、蒼太は仕事が終わって家に帰ったら、ご飯食べて風呂に入ってすぐ寝ること。なんなら俺の家に来なよ。俺が全部してあげるよ」 うっとりするほど有難いお誘いだ。 きっとヒロ君の隣でなら深く眠れるんだろうなぁ、 だけど、帰れるのが何時頃になるかハッキリ分からないのに、簡単に頷けない。 首を左右に振ると、ヒロ君は態とらしく唇を尖らせる。そんな僕の前でしかしないような表情に不安だった気持ちが少し薄れた。 「次のお休みは不動産屋さんに行ってさ、今度こそ内見して、家決めようね。」 「そうだなぁ。そうしたら蒼太は俺のところに絶対帰ってくるわけだし」 「そうしたら沢山甘やかしてもらお。」 「任せろ!」 ドン、と自らの胸を強く叩いた彼に小さく笑いながら、そろそろ時間だなと席を立つ。 「そろそろ戻るね。ちょっとだけでも仕事進めたい」 「あ、蒼太!」 すかさず手を掴まれて目をパシパシさせる。 首を傾げれば、ヒロ君は眉間にグッと皺を寄せた。 「しんどい時は周りの人をちゃんと頼るように」 「え?うん。わかってるよ。」 「……ホントかなぁ」 「本当」 「俺には何でも言っていいんだよ」 突然真顔で彼がそう言うから、胸がキュッとなって一瞬呼吸が止まる。

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