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第89話

お昼前。 ちらりスマホを見ると、ヒロ君からの不在着信と何件かメッセージが来ていた。 『大丈夫?』から始まり、『何かあった?』が続いて『お昼一緒に食べない?』のお誘いで終わっている。 「……」 「あ、上住君。橋本さんがいるよ」 「え」 いい加減返事をしようとしたのと同じタイミングで、北田さんに声をかけられて顔を上げた。 すると確かに、部署の入口に彼はいて、僕を見つけると途端にホッとした表情を見せる。 タイミング良くお昼になって、さすがに無視は出来ないので財布を持って彼に近寄った。 「蒼太、おはよう!」 「うん」 「大丈夫?体調悪いだろ。昨日はちゃんと帰れた?連絡来なかったから、もしかして会社に泊まってるのかと思って心配だった。」 僕の顔を見て眉を八の字にする彼。 心配してくれている。それだけ愛されているんだなとわかる。 なのに心は全く晴れなくて。 「大丈夫だよ。昨日ね、あまりに疲れて帰ってすぐ寝ちゃったんだ。」 「そっか……。今日は帰ってゆっくりできそう?」 「……実は飲みに行くことになっちゃって。」 話しながらビルを出て、いつも行く近くのご飯屋さんまで歩く。 その道すがら、今晩の飲みにいくことを話せば、ヒロ君はググッと眉間に眉を寄せた。

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