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第90話
「見るからに体調良くないだろ。やめた方がいいと思う」
「朝ぼーっとしてるうちに返事しちゃってさ、もう今更断るのも申し訳ないし、今日は行ってくる。明日働いたら休みだし。」
「そうだけど、倒れたりしたらどうするんだよ。」
「そうなったらヒロ君が迎えに来てくれたらいいよ」
「行くけどさ!!」
お店に入って席に座る。
ズーンと頭が重たい。
「そういえば、不動産屋さん、どうする?いつ行く?明後日休みだけど、体調が良くないなら来週くらい予約するけど。」
彼の言葉で、宇垣さんの存在を思い出す。
「……宇垣さんってさ、モテたんじゃない?綺麗だから」
「急になんでまたそんな話?モテだとは思うけど」
「ヒロ君とも仲良かったんだよね?」
「まあ、いつものメンバーっていう感じ。」
「……本当に付き合ってなかったの?」
「執拗いよ」
面倒臭そうにそう声にした彼。
出されたお水を飲んで、沈黙が走る。
「蒼太、本当に仕事が忙しいだけ?何かあったんじゃない?」
「……忙しいだけ」
「……そう」
嫌なこと、忘れたいことを心の箱に仕舞い込む。
例えば、仮にヒロ君が嘘を吐いていたとして。
もし宇垣さんが言っていたことが真実だったとして。
それでも僕が二人の過去のことをどうこう言う資格は無い。
二人が付き合っていたという過去は、今の僕には何一つ関係ない。
そのはずなのに。
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