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第94話
「言いたいこと何となくわかる気がする。その……彼氏君が嘘を吐いたんじゃない、本当のことを言ってくれているってわかってはいるんだけど、引っ掛かっちゃうんだよな。過去の事だし何も出来ないのに、モヤモヤしてして……そんな自分に引け目を感じて会うのがちょっと嫌になったり。」
「……そうです。まさにそれです」
北田さんの言うことは見事に合っていて、改めて言葉にされると胸が苦しくなった。
「ただ上住君の場合、そのモヤモヤするっていうのは、元カノさんが彼氏君にストーカーみたいな事をしていたから、余計感じてるんじゃないか?」
「そうかも、しれないです。なんかずっと引っ掛かってて……」
「その上、その元カノさんに謝られたとはいえ、気が合うんじゃないかって言われたら、そりゃちょっと……ねえ?」
お水を飲んで、熱かった体温が少しだけ下がる。
どうすればいいんでしょうか……。そんな気持ちで北田さんを見ると、彼は苦笑してビールを煽った。
「まあ、彼氏に正直に言うのが一番だろうね。謝られたけど、その時にこういうこと言われたって。信じてないとかじゃなくて、疑いたくないから本人の口から本当の事聞きたいって。」
「……言えますかね」
「言うしかないね。ちなみに彼氏って誰?俺の知ってる人?」
「まあ、はい。そうですね……。」
ヒロ君に伝えて、嫌な思いをさせちゃわないかな。
前もこういう事があった。
それも宇垣さん関係だ。
僕がちゃんと伝えられないから、いつも勝手に不安になっちゃって。
「──え、でもさ、何で元カノさんと会ったわけ?」
「それは……たまたま?」
「たまたま?たまたま会うってどこで?彼氏のいないところ?」
「え、はい。家に帰ってる途中で──」
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