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第100話

ヒロ君が僕と宇垣さんの間に立つ。 彼の背中しか見えなくて、それでも酷く安心する。 「お前がやってる事、犯罪だぞ。」 「アルファとオメガなんだから、別にいいじゃない。」 「は……?……信じらんねえ。」 「ほら、上住さんも発情してるし。アルファの私がオメガの彼を欲しいって言ってるの。邪魔しないで。」 ヒロ君は暫く沈黙したあと、大きな溜め息を吐いた。 そのままくるっと僕を振り返り、目線が合うようにしゃがんでくれる。 「ひ、ヒロ君、何で……」 「北田さんが教えてくれた。それより……急に発情期になったのか?抑制剤は飲んでなかった?」 「っ、誘発剤、宇垣さんが、つけてる……っ」 「……あいつから甘い匂いがする?」 「んっ」 何度も頷くと、彼は立ち上がりどこかに電話をした。 何かを話しているけど頭に入ってこなくて、ぼんやりしたまま彼を見上げる。 「美波、お前、そんなんだったっけ?」 「そんなって?」 「人の気持ちを考えられないやつ。俺、そんなやつと友達してた覚えないや。」 「考えてるじゃない。男同士より異性の方が世間的にいいに決まってる。」 「そういう事じゃないんだよな……」 言い合っている彼等。 時間を稼いでいるのかなんなのか、ヒロ君は煽るようなことを言っていて。 思わず彼の足に手を伸ばした。 ビクッと大きく反応したヒロ君は、僕を振り返って困ったように眉を下げる。 「もうちょっと待ってね」 「ゃ、も、やだ、ここ出たいっ」 「あー……あ、来た」 ドスドスといくつかの足音が聞こえる。 男性が三人とそれから──何故か北田さんがやってきた。 北田さんは宇垣さんの顔を見るとウンウンと頷いて。 途端、三人の男性は宇垣さんを囲み「お話聞かせてくれますか」と声をかけた。

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