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第108話
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肌とシーツが擦れる音。
眩しい光が目元に当たって、それから逃げようと寝返りを打つと大好きな匂いをすぐ傍で感じた。
それに引き寄せられるように近付いて、ピトッと彼にくっつく。
「蒼太、起きた?」
「……」
優しい声が降ってくる。
まだ眠たい。そう思いながら薄ら目を開けるとヒロ君が僕を見て微笑んでいた。
「おはよ。体の調子はどう?」
「……おは、よ……!?」
挨拶をしようと声を出すと、あまりにもガラガラなそれに驚いて、思わず喉を押える。
「発情期になったんだよ。覚えてる?」
「……」
何があったか覚えている。
宇垣さんの誘発剤で、ずっと来ていなかった発情期が来たこと。
宇垣さんに襲われそうになったこと。それをヒロ君が助けてくれたこと。
「今はまだ混乱してるだろうし、落ち着いてから話聞かせて。警察にも……蒼太が話せるなら、話してほしい。」
「……うん」
「ちょっと……北田さんに連絡してくるね。蒼太を助けてくれたの、北田さんなんだ。」
彼はそれだけ言うとベッドを抜けて、リビングの方に行ってしまう。
そういえばあの日、北田さんのお酒を飲みに行っていたんだった。
それが突然宇垣さんが現れて、あっという間にあんな事になったから、彼のことを忘れてしまっていた。
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