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第110話
「俺達って、運命の番だろ……?」
「あ、うん。」
「うん。その匂いってね、運命の番の間でしか感じないものなんだよ。あ、ちゃんと番にならないとわからないものなんだけどね……。」
ギョッとして目を見開く。
そんなの初めて聞いた。
運命の番は知っていても、その内容を深く知っているわけじゃない。
「え、でも起きた時は感じなかったよ……?」
「……感情の匂いなんだって」
「感情の匂い……?」
「うん。例えば俺が嬉しく感じたら、その嬉しいっていう感情の匂いが蒼太にはバレるわけ。……わかる?」
「おお……成程。……すごく恥ずかしいね?」
「うん。だからいい匂いって言われて恥ずかしかった。」
抱きしめられる力が強くなる。
肩に顔を埋めた彼はそこから顔をあげない。
「え、じゃあさ、さっきなんて思ってたの?」
「……言わせるのかぁ」
「聞きたいな。バニラの香りは何ていう感情だったの?」
「……蒼太が俺をじっと見てるから『可愛い』とか『好き』だとか思ってた。」
彼の感情を知って今度は僕が恥ずかしくなる番だった。
顔を両手で覆う。
今の僕のこの『恥ずかしい』もきっと彼には香りとして伝わっている。
「恥ずかしいだろ。今、香りするもん。フルーティーな感じ」
「……さっきヒロ君からも香った」
「……もうあれだな。匂いの話は無しにしよう。お互い恥ずかしいだけだから。」
「賛成」
大きく頷いてこの話は無理矢理終わらせる。
深呼吸をしてから、後ろに座る彼にもたれ掛かり脱力した。
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