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第113話

「あの……ヒロ君。沢山心配かけてごめんね。」 「いや俺の方こそごめん。俺……正直あいつはアルファじゃないかって思ってたんだよ。あんまり第二の性別を聞こうとは思わなかったし、誰にも言わなかったけど。……だから本当に怖かった。急いで警察に連絡したけど……」 北田さんがヒロ君と連絡を取りながらも僕を追いかけてくれていたことや、周りの目撃証言からすぐに場所が特定できて、警察と一緒に駆け付けてくれた。 同意じゃない事やオメガである僕が悪い立場にならないように考えて。 「あの時……まだ蒼太のフェロモンを感じることができたから、本当に安心した……。噛まれてたら感じなくなるだろ。だから……手遅れにならなくてよかった。」 「……」 鼻の奥がツンと痛む。 こんなに僕のことを心配してくれているのに、こんなにも愛してくれていたのに、勝手に宇垣さんの言葉に踊らされた。 彼には本当に酷いことをしたという罪悪感に胸が苦しい。 じんわり涙が浮かんで、それが我慢できずに零れる。 「〜っ」 「……え、あ……ごめん、嫌なこと思い出しちゃったよね。ごめんね、怖かったのにこんな話しちゃって……!」 ギュッと抱きしめられる。 違う、そうじゃない。ヒロ君は謝らなくていいと思うのに、次々溢れる涙で言葉にならない。

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