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第114話

しばらく泣いてようやく涙が止まり、グズグズになりながら、ポツポツ言葉を落とす。 「……僕、黙ってたことがある」 「うん。何?」 抱きしめてくれるヒロ君に凭れたまま、宇垣さんと帰宅途中出会った話をした。 「その時にヒロ君とは昔……ちょっとの間だけど付き合ってたって言われた。ヒロ君は友達だったって言ってたのに、その時は直ぐに嘘だって全否定ができなくて、それで……」 「うん」 「っ……、ごめんなさい。ヒロ君はこんなに僕のこと大切にしてくれるのに、それを裏切るようなことばっかりして……っ」 引っ込んだ涙がまた勝手に出てくる。 僕が泣くのは絶対に間違ってると思ってゴシゴシ袖で拭うと、ヒロ君の手がぐっと僕の手首を掴んでそれを止めさせる。 「俺は別に裏切られたなんて思ってないよ。アイツが俺に頻繁に連絡してきたり、急に現れたり……なんせ行動が異常だったから蒼太も不安になるのは当たり前だし。不安な時にそういう事聞かされると、どうしても疑心暗鬼になっちゃうよ。」 「……でも、すぐ話さなかった。話してたら……こんなに迷惑かけなかったかもしれない……」 「そもそも発端は俺だろ。蒼太に非は無いよ。」 ギューッと抱きしめられる力が強くなる。 苦しくて腕をタップするとヒロ君がフフンと笑った気がした。 「わかったって言わなきゃ抱きしめるの止めないよー」 「っ、わかった!」 「お、簡単に折れた。よかった。」 顔だけ振り返るとすかさずキスをされた。 それでも謝ろうとすると、キスが深くなる。 結局ハフハフと息が上がるまで絡み合って、『ごめん』の一言も言えずに彼の胸に沈んだ。

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