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第117話

「僕もそうなれるかな」 「ならなくてもいいよ。嫌な思いをするかもしれないって考えるだけで怖いだろ。蒼太が怖いって思うくらいなら人前でくらい俺は我慢できるよ。」 ヒロ君はそう言って僕の背中をとんと押し、足を進めるように促した。 それに抗うことなく歩くと、周りの人達も流れを止めることなく進んでいる。 「明日仕事行けそう?」 「え?」 「ん?だってさ、多分蒼太が思ってるより身体は疲れてると思って。あんな事があった上に、暫くの間は体が辛かったわけだし、それに今日は事情聴取だったじゃん。体は元気でも気持ちの方は大丈夫?」 「……なんか、泣きそう」 「え!?」 僕を思ってくれる彼の優しさに泣きそうになって、下唇の内側をぐっと噛む。 彼の優しさが胸に染みる。 今日は朝からよく泣くなと思いながら、目元を拭うとヒロ君が僕の手首を掴んでにて道の隅っこに連れられる。 「大丈夫?外歩くの嫌ならタクシー乗るけど……」 「え、ううん!大丈夫!僕元気だよ。それから……えっと、明日からはちゃんと仕事行きます。迷惑かけてるし……ほら、僕に任せてくれてた仕事もあったから……」 もしかしたらもう他の人の手に渡ってしまったかもしれないけれど、今回は僕が悪いんだし仕方がない。 言いながら少し沈んだ気持ちになったけれど、顔を上げてニッコリと微笑んでみせる。 「明日、ちゃんと皆に謝るよ。」 「そっか……。わかったよ」 トントン、肩を軽く叩かれ励まされる。 明日、僕を見る周りの目が鋭いものになっていたら嫌だなと思いながら、ヒロ君と一緒に彼の家に帰った。

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