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第123話
帰る準備をしていると、ヒロ君と北田さんが少しだけ話をしていた。
「蒼太、帰ろ」
「うん。北田さん、お疲れ様です。」
支度を終えて席を立つと、ヒロ君に手を取られる。
北田さんのいる前だけれど、彼の言葉を思い出してその手をギュッと掴んだ。
「お……!」
「……今日も、ヒロ君の家に帰っていい……?」
「もちろんだよ」
「……早く一緒に住みたいな」
「そうだね。早く家決めちゃわないとね」
一緒にエレベーターに乗りビルを出て帰路に着く。
彼の家に着くまで手は繋いだまま。
心臓の音と、周りからの視線がうるさい。
それでも手を離さなかったのは、何かがあってもヒロ君が守ってくれると思ったから。
北田さんが、彼を信じて頼ってみるのもいいと思うと教えてくれたから。
「──っ緊張したぁ……!」
家にあがり、大きく息を吐いて玄関に倒れ込む。
段々気にならなくなっていったけれど、帰宅すると遅れてドッと襲ってきた緊張感に疲れてしまった。
「蒼太ぁ。手繋いでくれてありがとね」
「ううん、僕も繋ぎたかった」
「でも疲れちゃったね。すっごい不安そうな顔してたし」
「不安っていうか……緊張して強ばってたと思う」
頭をヨシヨシ撫でられる。
おかげで心がホッとして、「ヒロくぅん……」と甘えた声が出た。
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