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第124話
「なあに」
「僕、ヒロ君と手繋ぐの好きだよ」
「……かわいい」
手を取られ、きゅっと握られる。
温かい体温は僕を安心させるようにニギニギと手に力を入れたり抜いたり、そっと甲を摩ったりして動く。
「僕達のこと見てる人、いっぱいいたけど……なんか思ったより怖くはなかった、かも……?」
「うん。誰も嫌な目は向けてこなかった気がするよ」
「……僕の考えすぎなのかな」
「意外と受け入れてくれる人の方が多いかもよ」
彼の言葉になるほどなと頷く。
確かにそうだ。昔は偏見が酷かったけど、時間が流れて、人の世代が変わるように、言葉や考え方の世代も変わっていく。
「……オープンになるわけじゃないけど、聞かれたら答えるくらいの……そういうのがいいかも。」
「うん」
「……もしも、誰と付き合ってるのって聞かれたら、その時はヒロ君って答えてもいい……?」
「え!他に誰の名前出すわけ!?俺の名前出してくれないと困るけど!?」
わざとらしく頬を膨らました彼が愛しく感じ、体を起こしてそっとプクプクの頬にキスをすると、途端にプシューと萎んで小さくなった。
「……蒼太が元気になってよかった」
「え?」
「帰るとき、元気なかったから。フロア覗いたら北田さんと真剣に話してるし、何かあったのか、疲れちゃったのかなって思ってたんだ。」
「──わっ!」
いきなり抱き上げられ、慌てて靴を脱ぎ捨てるとリビングのソファーに座らされる。
隣に座ったヒロ君はとても優しい表情だ。
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