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第125話

「多分まだ気持ちの部分が全快じゃないから、今日仕事してドッと疲れてるんだろうなって。」 「あー……うん。実は皆帰っていくのに、立ち上がる気力が湧かなくて」 「そっか。頑張ったね」 ふんわりとお花に包まれたような香りがして、それに惹かれるように彼の腕の中に収まる。 頭の中に霧がかかるようでハッキリと思考できない。けれど怖くはなくて、むしろ心地好い。 「ん、ヒロ君……」 「んー?あ、はは、可愛い、気持ちよくなった?」 「ヒロ君の匂い、好き……落ち着く……」 運命の番同士が、感情の匂いを感じるのは、こうしてお互いが安心できるためなんだろうなと思う。 相手が本当に怒る前に、悲しむ前に、……別れを切り出される前に。 香りで気持ちを共有して、お互いに寄り添うため。 安心できるのと同時に、本能がアルファのヒロ君を求めてしまっているのも事実。 でも明日も仕事だから、早く眠って今日の疲れをリセットさせたい。 「俺も蒼太の匂い好き。……ね、このままエッチしない?」 「えっ!……ぁ、でも、明日も仕事だし、今日は疲れちゃったから……」 「……触り合いっこだけでもダメ……?」 ヒロ君も僕と同じなんだろうか。 本能が求めてくれてる? 「……ん、触りっこ、だけ」 彼は嬉しそうに微笑む。 僕も同じ表情をすると、ぶちゅっと子供にされるみたいなキスをされた。

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