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第129話
「それに申請はそれぞれがするじゃないですか。パートナーの名前も書かなきゃいけないし、そうなればお互いの名前を書くわけで、提出する先には全部バレちゃうし……」
「僕がまだそこまで割り切れなくて……」
そう言うと、北田さんはキョトンとして、小首を傾げる。
「俺はただのベータなんで憶測でしか話せないし、これは上住君の前で言うべきじゃないのもわかってるんですけど……アルファ的に、自分の番が隠そうとしてるのは……あー……」
チラチラ僕を見て言葉を選んでる北田さん。
「大丈夫です。気にしないでください。」と続きを促すと、「ごめんね」と言って言葉を続ける。
「アルファ的には、我慢できることなんですか?」
「……んー……」
「アルファは自分の番を取られないように、周りにアピールしたりする人もいるって聞きます。逆に家に閉じ込めたりせる人もって。今の状態はアピールもできないし、仕事してるから閉じ込めることもできない。それは……結構キツイんじゃないですか……?」
僅かにお酒が入ってる北田さんは、ヒロ君にそう言ったあと何度も謝ってきた。
ヒロ君はウーンと小さく唸りながら考えていて、僕は隣で心臓をドキドキさせている。
ヒロ君は普段から僕の好きなようにさせてくれている。
でもそれは世間一般的には不思議な事らしい。
性格の問題ではなく、アルファの本能でオメガを大切にしたいが為に誰の手にも触れられないように隠してしまったりするから。
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