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第140話
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目を覚ましたのは朝の五時。
隣で眠っていたヒロ君を見て、愛しさと同時に容赦が無かったなとほんの少し恨めしく思った。
腰が痛い。というより下半身の違和感がひどい。
体はスッキリしていて、僕が意識を飛ばしてしまったあとに拭いてくれたんだと思う。
ゆっくりと動いてシャワーを浴び、朝ご飯を作る。
六時半にポヤっとした表情で起きてきた彼は、フラフラしながらキッチンに立っていた僕に抱き着いてくる。
肩に顎を乗せて「おはよぉ」と掠れた柔らかい声が鼓膜を揺らした。
「おはよう。昨日寝る前に体拭いてくれたよね。ありがとう」
「んーん。俺自覚してる。無理させた」
「うん。結構下半身に違和感がある」
「ごめんね。蒼太が可愛くって」
「誘ったのは僕だからいいんだけどね」
ちょうど切っていたリンゴをヒロ君の口に放り込む。
シャクシャクと食べた彼は「もう一個ちょうだい」と甘えて口を開けて待っている。
「先に準備しておいでよ。ご飯用意しとくから」
「あー、もう一個だけ……」
「ふふ、うん。じゃああと一個ね」
もう一つあげると嬉しそうに笑って離れていく。
ペタペタ歩いて洗面所に行った彼を見てから、朝ご飯をテーブルに並べた。
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