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7月5日 家に来て
どれくらいの時間、飲んで食べて話してたのか、小泉さんはかなり気さくで話上手で聞き上手でひろとくんパパだってことをすっかり忘れてしまうくらい、楽しい時間を過ごせた。
「尚弥先生、明日も仕事、ですよね?」
「・・・・・・はい。あ、その・・・明日は遅番なので、朝はゆっくりなんです。」
甘めでアルコールの軽めなカクテルばかりを何杯か飲んでいたけどそんなに酔っ払ってはない、はず。
何で咄嗟にそんなことを言い出したのか自分でもわからない。
「・・・・・・俺も明日も在宅で、ひろとは実家に泊まっててそっちから保育園行く予定なんですよ。だから・・・・・・。」
小泉さんは強そうなお酒を結構飲んでいて、ほんの少しだけ顔が赤い。
カッコイイけど可愛いーーー・・・・・・。
「・・・・・・はぁ、やっぱり、好きだな。」
あ、っと思ったときには驚いたかのように目を見開いた小泉さんが目の前にいて。
しまったーーー・・・・・・。
「あ、あの・・・・・・今のは、その、小泉さんって、お、俺の好きなタイプだなぁって。か、顔とか?いや、顔だけじゃないんですけど、」
焦りすぎて何を言ってるのかわからなくなる。
「ふははは、尚弥先生、焦りすぎ。もし良ければ、うちで飲み直しませんか?」
「えっと・・・・・・それは・・・・・・。」
在園児の家にお邪魔するなんて保育園のルールに反する。
そんなの駄目に決まってるのに、どうしても断ることができない。
「無理強いはしたくないので、ゆっくり決めて下さい。」
ふわっと笑って当たり前かのように頭を撫でられる。
小泉さんに撫でられるとドキドキするけど嬉しくてもっとって言いそうになってしまう。
「・・・・・・い、行きます。行き、たい、です。」
「・・・・・・先に言っときますけど、家に俺一人なんですよ。来たら帰したくなくなっちゃうかもしれませんよ?それでもいいですか?」
頬杖つきながら細められた目で見つめられる。
それはすでに保護者と子供の担任ってだけの関係じゃないぞってことを意味しているようで、マズイとは思うのに拒否する選択肢はなくて。
俺は下向いて無言で頷いた。
「それじゃ、行きますか。」
小泉さんは俺も支払うって言ったのを阻止して全てを支払ってしまった。
そのまま小泉さんの後をついて行く。
ドキドキと心臓が煩くて痛いーーー・・・・・・。
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